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事例11 星条旗のブーメランパンツで人生最高!



「ここ数日 Iさん見ないねぇ」

「そういえば、Iさんどうしてる?」

「旅行に行くって話もしてなかったし、電話にも出ない」

と長期タイ在住者リタイア組の仲間内でIさんの話題になった。行きつけの居酒屋などでも1週間近く顔を見ていないもので「もしや?」と思い仲間数人でI氏居住のアパートへ。管理事務所のスタッフに状況を伝え、スタッフ同行のもとI氏の部屋へ。


部屋の前までくると、そこはかとなく漂う異臭。警察を呼んで鍵をこじ開けて部屋に入ると案の定…。

タイの気候のせいで御遺体の痛みも早いようで、御遺体から出た液体がベッドにシミを作っていた。


リタイヤ組数人のお仲間は、日本にいるI氏のご親族の話は生前に何度か聞いはいたが、面識もなく連絡先も知らない為、在タイ日本国大使館を通じご親族へてI氏死亡の連絡となり、日本からI氏の長男と次男が訪タイすることになった。


1日目

バンコク夕方着便で到着、空港出迎え、ホテル送迎でこの日は終了。


ホテルへ行く途中の車の中で、長男Aの話。

「父親であるI氏が存命の頃、数度タイへ遊びに来たことがあり、父親I氏が住んでいる場所の周囲の状況はだいたい覚えている」「大使館よりの情報で御遺体の損傷が激しいのでタイで火葬をしてお骨を持ち帰ることにしている」「I氏のタイでの御友人(長期滞在のリタイヤ老人連中)とお話をし生前の様子についてお聞きしたい」とのこと。

以前、I氏はS&B(カレー粉など)の社員で単身でタイ駐在となり、その頃に知り合ったタイ女性に入れ込み、「タイでガソリンスタンドを建てる」等と日本で借金を作り、最終的にその女性に金品は全部とられた様子。経済的に家族に多大な迷惑をかけながらも、定年後はタイで余生を過ごしたいとのことで、リタイヤビザにてタイ滞在。たまに日本一時帰国していたものの、ほぼ日本に帰ってこない生活であり家族との縁も薄く、当初は訪タイもせず無縁仏としてそのまま放っておこうと考えていたとのこと。


2日目

朝に宿泊ホテルへ出迎えてから大使館領事部へ。

警察が現場検証で部屋に入った際に保管した時計、財布などの貴重品を大使館へ返却、担当領事から御兄弟が受領。

居住していたアパートの場所で、管理事務所の担当者とI氏の御友人数名が、指定の時間に合わせてお会いしたいとの事で、御兄弟了承。

担当領事より警察病院での遺体の確認、葬儀、火葬の日時、場所などのスケジュールの説明。所轄の警察からの事情徴収は今回必要なしとの事。

遺体確認の時間までしばらく間が有るので、先にアパートへ行き、部屋の確認。I氏の御友人3名が既にこちらの到着を待たれており、挨拶を済ませてお話し。月に2-3回ゴルフ行ったり、飲みに行ったりの付き合い。またI氏は付き合いのある(定期的にお金を渡している)特定のタイ人女性がいたようであること、ただ、関係が絶たれて別の女性になったり、と現在はどの人であったかは不明との事。

「また、翌日の葬儀、火葬に参列します」とのことで1時間ほどの話のあと友人達が帰られる。

その後、遺体確認の時間まで部屋に入って遺品回収。


夕方近くに警察病院にて御遺体確認。家族との今までの経緯、御遺体の痛みが進んでいることもあり、御兄弟は余り悲しむ間もなく数分で終わりにし警察病院からホテルへ。


3日目

午前中に火葬の為、朝からホテルに出迎えて、お寺へ。御友人3名が参列。

簡易な葬儀の後火葬。窯に遺体が入るのを見届けて葬儀終了。途中、ショッピングモール内のレストランにて昼食。その後アパートにて遺留品の回収作業の続き。

管理事務所に話をして部屋に入り整理をしていると、I氏がゴルフをしている写真や友達と旅行に行ってる写真などがでてきて、「この写真なんか日本での葬式で遺影に使えるんじゃない?」「このゴルフセットは形見として日本へ持ち帰って使う」など故人を偲ぶような話が御兄弟から出て来て少しホッとした雰囲気に。その矢先に、I氏が股間の強調されたアメリカ国旗柄のモッコリパンツ(ブーメランパンツというらしい)一丁で両脇に孫ほどの年齢の娘を侍らせながら、「人生楽しい~最高!」と目をキラキラさせてピースサインで写ってる写真を発見。ドラゴンボールの亀仙人を思い起こす写真を見て自分は思わず「ウッ」と笑いを堪え切れずに噴き出してしまったが、御兄弟は複雑な表情。借金を拵えて家族に迷惑をかけ、挙句に日本の家族を捨てるような形で一人タイ移住、何をしてるのかと思えばこんなことをして、自分だけ楽しそうに幸せそうにしてる表情に腹が立つ、70過ぎのイイ歳したと爺さんが孫娘みたいな年齢の若い娘を両脇に抱えてパンツ一丁で…と。「こんな写真オフクロには見せられんわ、フ~。腹立つわ~」と肩を落として溜息をつきながら愚痴をこぼす。御兄弟には言えなかったが、世間的には余り良いものではないのかもしれないが、個人的には羨ましい生き方であると思ってしまった。


そんな事もありながら持ち帰る遺品を仕分けし、部屋の解約手続きと清算の為に管理事務所へ行き、冷蔵庫やテレビ他は欲しい人に譲る旨を告げて部屋の鍵を返却。管理事務所は掃除などの費用はデポジットで賄えるので、掃除、電気代などの清算の心配は不要とのことで残額を返金してくれた。


4日目

御骨上げ、領事部での遺骨証明手続き。午後に時間が空いたのでワット・アルンなどのお寺観光。渡し船に乗りながら「昭和の雰囲気を感じる。昔、日本もこんな感じだった。」などとタイのロカールな風景に幾分、癒されたご様子。

夕方、バンコク市内のショッピングモール内で時間を潰し、夕食。その後空港まで送りチェックイン手続き、終了。

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